私のご主人様Ⅲ

「って、琴音ちゃん、声は?奏多って呼んでみ?」

そういえば、全然声を聞いてない。2週間前まではちょこちょこ呼んでくれていたのに今日は全然聞いてない。

促してみると、琴音ちゃんは困った顔をして口をぱくぱくさせる。

「……………………」

口の動きで奏多さんと言ってるのは分かる。でも、声が全く出ない。かすれた声すら出なくなってる。

どうして。前は意図して出そうとすれば途切れながらでも出せていたのに。

手を捕まれたまま琴音ちゃんの頬を包むように手を当てると、困ったように眉を下げてしまう。

「寂しかった?」

「…コク」

「そっか。…わかった。やっぱり一緒にいるよ。手伝いはまだ無理だけど、近くにはいるからね」

「………………コクン?」

「奏多さん、邪魔なんでさっさと全快してください」

あれ、そこは喜んでほしかった。

琴音ちゃんも暁と同意見なのか、タブレットに『ちゃんと治してください』と打ち込んで見せてくる。

…早く全快しないとなぁ。

早く治すと約束していると、屋敷に丁度戻ってきた。
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