私のご主人様Ⅲ

「座れ」

「…」

いつもなら台所へ直行するのに、すぐに部屋に押し戻される。

その場に正座して暁くんを見上げると、ものすごい怖い顔をしてる。今までみたことがないくらいだ。

…言い訳、考えとくの忘れた。

だらだらと流れていく冷汗に体は冷えて、目の前で怒っている暁くんを納得させるだけの嘘を思い付ける余裕なんかなくなっていく。

「琴音、なんで勝手に校門を出た」

「…」

「言ったよな。今どれだけ危ないのか。学校なら安全だから連絡あるまで出るなって」

暁くんの言葉に、違うと心が否定する。

学校は安全じゃない。むしろ、今最も危険なのは学校だ。

永塚組に敵対する組の、若頭がいる学校のどこが安全なんだろう。

でも、言えない。犯人を、敵対する組織すら知らない永塚組の人には、何も…。
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