カズキ、10年愛〜不良のあなたに恋をして〜前編
「タダイマ…」



くたびれたこの家に、小さく声をかける。





家の中は、また母さんと争ったのだろうか…?



物が散乱している。




弟と妹はどうしているのだろうか…




俺は弟の居る部屋へ向かう。



弟の居る部屋は、


部屋というにはあまりにも粗末すぎていた。




そこは、石炭を納める部屋でツーンとかび臭いにおいが鼻をつく。




布団はひきっぱなしで、漫画の本が乱暴に散らばっていた。





几帳面な弟が物を散乱させるほど、今弟の心は病んでいるんだ。





「またか…」

ぽつりとつぶやく。




しかし、この部屋はゆいつ弟の居場所には違いはなかった。




妹と言えば、茶の間に一人いつも寝かされていていた。



テレビが一台しかないため、深夜を過ぎようと、あいつはお構いなくテレビの音量を上げ、大声で笑っていた。




その為、幼い妹はいつも目の下にくまをつくっていた。





もうみんな限界にきていたのだった。








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