桜の季節、またふたりで
何もかも初めての環境に慣れてきた5月、斉藤さんから誘われた。


「久しぶりに、大学以外で会わない?」


たしかに、大学構内で立ち話することはあっても、わざわざ外で待ち合わせしたことはなかった。


「いいですけど・・・」


「じゃあ、明日の17時に駅前で」


「でも、斉藤さん忙しいんじゃないんですか?」


「忙しくなる前の、最後の悪あがきってとこ」


よく意味がわからないけど。


「どこへ行くんですか?」


目的によっては、服装を考えないと。


「駅前に最近できたイタリアン、けっこういけるんだって。


美春ちゃんと、ごはん食べながら話したいと思って」


「はい」


はい、って誘いにのってしまった。


こんなんで、いいのかな。


私は、高校の卒業式の日に、まどかの家に泊まった時のことを思い出していた。


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