桜の季節、またふたりで
それからは、またなんでもない話題に戻って、ファミレスを出たのは20時すぎだった。


車に戻って、少し冷えたシートに座った。


ふたりともしゃべらなかったから、車内の空気まで冷えてきた。


「美春ちゃん、また誘ってもいい?」


「・・・普段着でもいいなら」


「いいよもちろん、俺には気を使わなくていいから」


車はゆっくり出発して、ふたりが住む街へ戻っていく。


私のアパートと五十嵐さんのマンションは、ちょうど高校をはさんで反対側で、自転車なら行けない距離ではなかった。


いつか、五十嵐さんの部屋に行くこともあるのかな、なんて想像が頭の中に浮かんで、あわてて消した。


夕方待ち合わせした場所に着き、車はハザードランプを点滅させた。


「今日は楽しかった、またな」


「はい、私も楽しかったです。


ありがとうございました」


「おやすみ」


「おやすみなさい」


車を降りて夜空を見上げたら、星はひとつも見えなかった。


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