桜の季節、またふたりで
「美春は、なんで大学を目指そうって思ったんだ?」


「私は本が好きだから、出版社に入りたいっていう夢があったの。


経済的に無理だってわかってからはあきらめてて、高卒で働こうって決めてたんだけど。


今の成績を維持できれば、奨学金もらえそうだから」


「そっか、応援してるから、がんばれ」



私は、すごく幸せだった。


大好きな人と、『はじめて』を経験できたから。


大好きな人は、私をとても大切にしてくれるから。


この幸せは、永遠に続くって思っていた。


何の不満もないし、一緒にいられればそれで良かった。



だけど、環境の変化は、私たちふたりの関係にも影響があったんだ。


その変化の波に流されてしまうなんて、この時は想像もしていなかった。


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