イケメン小説家は世を忍ぶ
私がここに来ることはもうないだろう。

桜井先生……どうかご無事で。

「さよなら」

小さく呟いて桜井先生の家を後にし、最寄り駅に向かう。

とぼとぼと歩いていると、先生と歩いた桜並木が見えた。

桜はもう散り始めていて、どこか寂しさを感じずにはいられない。

名残り惜し気に桜の木を眺めていると、突然何者かに背後から口を塞がれ、ハンカチのようなものを口にあてられた。

“キャー”って叫ば良かったのに、こんな時に限って声は出なくて……。

誰なの!

そう思ったけど、次第に視界がぼやけて意識が遠のき……。

その後の記憶が全くない。

次に気づいた時、私は飛行機の中にいた。
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