イケメン小説家は世を忍ぶ
『人の家で十時過ぎまで寝てるなんて、図々しい奴』と皮肉を言われ、やっぱり嫌な奴だって思った。

そりゃあ口述タイプに時間がかかったし、タイプミスもあって迷惑はかけたかもしれないけど、私も精一杯頑張ったつもりだ。

先生の家で遅くまで寝てしまって申し訳ない気持ちはあるし、そんな酷いこと言わなくても……。

お風呂をお借りして身綺麗にした後、桜井先生のお手伝いさんが用意してくれた朝食を頂いた。

いや、お昼に近かったしブランチというべきか……。

先生はこの家にひとりで住んでいるけど、敷地内に離れがあってお手伝いさんがそこに寝泊まりしているらしい。

食べたら家に帰ろうと思っていたのに、桜井先生に突然庭の草むしりを命じられた。

今着ているジャージは、先生が用意してくれたもの。

先生の物なのかサイズが大きくて三回くらい折り返して着ていると、『それ着てると小学生にしか見えないな』と先生に鼻で笑われた。

今思い出してもムカつく。

私だって好きでこんなジャージを着ているわけではない。
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