イケメン小説家は世を忍ぶ
ケント皇太子という文字を見て、まず思い浮かんだのが、桜井先生のスケッチブックに書かれていた “Kento”というサイン。

これは偶然の一致なのだろうか?

そう思いながら記事を呼んでいくと、ケント皇太子のビデオメーッセージの動画もあって、電車の中だというのに『桜井先生?』と思わず声を上げてしまった。

私に突き刺さる周囲の冷ややかな視線。

『……すみません』

小声で謝り、再びスマホの画面を見る。

見間違えるはずはない。

眼鏡はしていないし、前髪を下ろしていて印象はかなり違うけど……これは先生だ。

服だって昨日夜会ったときと同じ白いシャツだったし、手にはあのサファイアの指輪をしている。

動画の中の桜井先生は、真剣な表情で語りかけていた。

その真っ直ぐな眼差しに引き付けられる。

いつもの意地悪で、どこかニヒルな感じの先生とは違っていた。
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