甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

   「あのブルー・サファイアの首飾りを模して、婚約のネックレス
    を作ってくれるという気持ちは嬉しいの。でもね、あれは
    あまり良くない噂のあるもので、簡単に持ち出せるものじゃ
    なくて......」

   「知っているよ、持ち主を不幸にすると言われている呪いの
    ブルー・サファイア。
    ところが、エインズワース子爵のところにあるかぎり、その
    呪いは発揮されない。
    しかし、子爵の手から他の誰かにうつったとたん、その持ち主は
    呪いをうけ、姿を消す。そして巡り巡って、サファイアはまた
    子爵のところへ戻る」

   「だからあなたに、呪いが......」

   「だいじょうぶだよ、僕はちょっと借りるだけで、持ち主になる
    わけじゃない。それにエインズワース家にあれば、その宝石が
    おとなしくしているということは、ブルー・サファイアこそが
    エインズワース家の象徴なんだよ。
    だから、記念の品はブルー・サファイアがいい」



 それでもまだ顔を曇らせたままのイリーナの細い顎に指をかけて
 上をむかせたレナルドは、じっとイリーナの瞳を覗きこんだ。



   「それに、ブルー・サファイアは君の瞳の色、君の白い肌を
    飾るのは、サファイアこそふさわしい」



 ユアンを見上げるブルーの瞳が熱を帯びる。

 ああ、これは女がキスを強請るときの顔。

 そう思い、ユアンはさくら色の唇に、そっと自分の唇を近づけた。

 だが、イリーナが瞼を閉じた瞬間、ユアンの脳裏に浮かんだのは
 グリーンの瞳。
 
 淡く、濃く色を変える不思議な瞳を思い浮かべたまま、ユアンはイリーナ
 に深く口づけた。
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