甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 
 
 結局その夜、フィーネは娼館には戻らなかった。

 ユアンは、驚き口をぱくぱくさせているフィーネになにか言う暇を与えず
 一階のベッドのある部屋に連れて行くと、そこで休むようにと言って
 出て行ってしまったからだ。

 翌朝になり、肩を揺すられて目覚めたフィーネは、ベッドの傍らに立った
 ユアンを見て、小さく叫び声をあげると、慌てて上掛けを目一杯引き上げた。

 どうやら日はもう高く上っている。

 昨晩いろんなことがありすぎて、なかなか寝付けなかったせいで、
 寝過ごしたらしい。

 だって、昨夜はびっくりすることばかりだったもの_ _

 酔っ払いに襲われる、

 ユアンに抱き上げられる、

 本当の仕事は、劇作家だとユアンが言う。

 いろいろ思い出して、さらに上掛けを引き上げたフィーネの上にユアン
 の声が落ちてきた。


   
   「さっさと着替えろ、出かけるから」

   「出かける?」

   「いいから、早くしろ」


 
 いらいらした口調でそう言うと、ユアンは部屋を出て行ってしまった。

 


 
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