【短】エイプリルフールは別れの日



 ………………



「気をつけて」




 私はそう言って荷物を彼に渡す。中に私からの手紙を忍ばせて。




「大学、瑠美と一緒なんだってね。最近、聞いたよ」


「あ……言ってなかった……かな」




 頭を掻きながらエイジは誤魔化す。全部知ってるくせに、そうやってとぼけるなんて酷い。



 そのピアス、エイジ好みじゃない。
 その香水って誰のもの?
 寒くもないのにマフラーなんて巻いて……どうして?




「昨日、瑠美とここでお別れしたの」


「そうだったんだ。莉子と親友だもんな」


「でもおかしいのよ。直前まで大学どこへ行くか教えてくれなかったの」




 嫌味。私はあなたを試してる。
 笑いながら、あなたの感情を探る。
 あなたが謝ってくれたらなんて期待してる。




「莉子と別れるのが辛かったんじゃねえの?」


「そうかしら」




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