夢みるHappy marriage

そう言って、木製のテーブルの上に突っ伏す。グラスに入ったお酒を睨み付けながら続けた。

「だから女の幸せって絶対男で決まると思っちゃう。あいつのせいでお母さん泣いてばかりだったから」

「考えが極端すぎるんだよ、女の幸せって別に結婚だけじゃないでしょ?趣味とか仕事に見出したって良いじゃない」

「そりゃあね、真紀ちゃんは大きな会社入ってバリバリ働いてるからそんなことが言えるのっ」

完全に愚痴モードに入った私に真紀ちゃんが大きなため息をついたのが聞こえた。
それでも、やっぱり今日のことが悔しくてどうしても口に出さずにはいられない。

「今日はね頭の中でチャペルの音が鳴ったのゴーン、ゴーンって。もう、運命の人なんだって思ったのにー、バカー」

そう言ってテーブルに突っ伏したまま、顔を横に振る。

明日も普通に仕事だっていうのに、帰りは終電近くになっていた。真紀ちゃんには、「もう、あんたの愚痴には付き合ってられないよ」ってお小言を言われてしまった。

真紀ちゃんは、日付の変わった電車のホームであーあと嘆いていたけど、派遣社員の私は気軽なもの。
明日のスケジュール帳を見て、フェイシャルエステが入っていたことに思わず胸を弾ませちゃう位。
よしっ、明日はいつも通り定時に即行帰ろう。

翌朝、いつものように出社時刻ギリギリに登場。
お茶くみ、コピー取り、その他の雑用を適当にこなし、そわそわしながら終業時刻を待つ。

デスクに座りながらオフィスの時計を睨み付け、ようやく定時17時までのカウントダウンに入った。もういつでも更衣室へスタートダッシュできる体勢に入っている。

それなのに、運悪く、上司の中川さんに声をかけられてしまった。


< 11 / 107 >

この作品をシェア

pagetop