始まらなかった恋
☆初恋は実らない(彼女視点)
「俺みたいな奴でも声かけやすかったって言うか…まぁ、もしかしたら付き合ってもらえる可能性あるかなって思ってさ」
いきなり突きつけられた現実。
その声は間違いなく二ヶ月前から私、山岡楓と付き合っている中谷のもの。
バレンタインを少し過ぎた頃から付き合い出し、新学期にはまた同じクラスになれたねと笑いあった中谷の声。
そして、その声をスマホで録音したのは私の親友の木村由香利。
中谷と委員会が同じ由香利は放課後、中谷に
「楓のどこに惚れたの~?」
とからかったらこう答えたのだと言う。
由香利は、その答えを私に聞かせようとして内緒で録音していた。
もちろん、いい意味で私を驚かせたかったのだと思う。

付き合ったきっかけは、
「彼氏居ないんだったらさ、俺と付き合ってみる?」
という中谷の言葉に、話しやすい中谷に好意を持っていた私は小さく頷いただけ。


由香利からそんな質問をされたからって中谷が素直に答えるとは思えないけど、悪戯好きの由香利ならそんなことを思いつきそうだと納得した。
でもまさか、私の親友にそんな答えを投げつけるなんて。
それは、私に伝わると分かっての行動なんだよね?
< 1 / 31 >

この作品をシェア

pagetop