コイスルエバポ
全ての行程を終え、私は出来上がった色とりどりの液体をスマホで撮って薬学で実験している三人に送った。

教授と清水さんに今回の実験に参加した証明書を受けとる。二人にありがとうございましたと挨拶して、私はそれを大切にファイルの中に仕舞いながら外へ出た。

疲れもありつつ、今までにない充実感を感じて胸がいっぱいだ。
そんな中、ふと話しかけてきた男子のことを思い出す。

彼はどうして研究がしたいと思ったんだろう、きっと私みたいにかっこいいから、楽しいから、とかじゃなくて何か立派な目的があるんだろうな…

ぼーっと考えながら歩いていると、道の先が行き止まりになっているのが見える。
道を間違ってしまった。

私が引き返すと、角の辺りで遠慮がちに私の方を見る影がみえる。


「えっと…全然違う方向行ったから、あれ?って思ったんだけど…迷った…?」

例の男子だ。
私は、彼がいることへの驚きより、全然違う方向に行ったのを見られていたことへの恥ずかしさに、思わず下を向いた。

『あの、ぼーっとしてたら、逆方向に来ちゃったみたい…』

「そっか、道、こっちだよ。」

彼が正しい道のある方へ歩き始めたので、私は彼の隣へ小走りで向かった。
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