一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
単純に久し振りに南さんに会えるって舞い上がってしまっていたけれど、考えが甘かった。

来ただけで既に疲労困憊気味だ。でも――。

エレベーターは目的の階に到着し、ドアが開かれた。

あと少しで南さんに会えるのかと思うと、緊張してくる。

辿り着いたドアの前で一度大きく深呼吸をし、メールに書かれていた通り、鍵を取り出した。


メールにはなんでも仕事に集中しちゃうと、周囲の音が聞こえなくなっちゃうらしく、鍵を使って家に入ってご飯を作って待っていてほしいと書いてあった。


初めて訪れる南さんの自宅マンション。なのに勝手に鍵を開けて入るのには気が引けてしまうけれど、仕事中なのに邪魔するのも悪いし、南さんが入っていいって言ってくれているんだから、いいんだよね?


高鳴る胸の鼓動を押さえながら鍵穴に差し込み施錠を解除し、恐る恐るドアを開けた。

「お邪魔します……」


ボソッと小さな声で断りを入れてドアの先に広がる景色を眺めると、玄関からリビングらしき場所まで電気は灯されていた。
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