一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「それくらいしかできないからさせてもらうよ。……ごめんね、ミャー。本当にごめん」

謝罪の言葉を繰り返すと、南さんは優しく私の身体を抱き寄せた。

「ごめん……」

何度も謝る彼に、目頭が熱くなっていく。


どうして涙が溢れちゃうのかな。私……ショックだったのに。どうして謝らないでって思っちゃうんだろう。


どれくらいの時間、抱きしめ続けられていただろうか。ゆっくりと身体が離されると、私が泣いていることに驚いた彼は涙を拭ってくれた。

すっかり冷えてしまった冷たい指が優しく目元や頬に触れていくたびに、胸がトクンと鳴ってしまう。

すっかり涙も止まった頃、最後に彼はふわりと笑い言った。


「もし……僕が今よりもっと強くなって、人の気持ちを理解できるような男になったら、もう一度ミャーにプロポーズしてもいいかな? ミャーを幸せにする自信はないけれど、この先もずっとミャーを想う気持ちは変わらない自信があるから」


断言する彼にまた目が潤み出してしまう。

「……はい」

返事をすると南さんは愛しそうに目を細め、最後に「好きだよ」と私に伝えた後、車に乗り込み去っていった。


「私……なにも言えなかった」

南さんに伝えたいことはたくさんあったはずなのに。彼は私に自分の想いを伝えてくれたのに。

胸が痛むほど好きなのに、どうしてなにも言えなかったんだろう。

真冬の夜空。凍えるほど寒いはずなのに彼が運転する車が去った後も、ずっと立ち尽くしてしまっていた。
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