国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「わたし、もうすぐユリウスさまと結婚をするの。あと19日よ。出席してから島に帰ってほしいわ。その頃には怪我が治っていると思うし」

ふたりが結婚する。

ルチアの胸はズキンと痛みを覚える。

わたしが姫よ。と言い切れる確たる証拠はなにもない。

祖母を疑うわけではないが。しかし、自分が姫になったとしたら、祖母はエラの両親に嘘を吐かせて、罪を犯したことになる。
 
ルチアのユリウスを想う気持ちは強いが、祖母も大事だ。自分がこのまま島へ帰るのが一番いいと考えていた。
 
廊下で控えていたエラの侍女が扉をノックし、作法の時間を知らせる。

「王妃になるのってすごく大変。毎日が勉強なのよ。また来るわね」
 
エラは姫然と優雅に椅子から立ち上がると、部屋を出て行った。



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