国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
ジラルドを目にしたときも、とても恥ずかしかったが、銀色の髪を後ろでひとつに緩く結んでいる青年は神々しく感じられ、目と目を合わすことが出来ない。

「エラ、アドリアーノ候だ。顔を上げなさい」
 
ジラルドに言われ、エラはおそるおそる顔を上げた。
 
次の瞬間、ユリウスの双眸が大きくなった。

ルチアを見たときも、エレオノーラに似ている容姿に驚いたが、彼女よりも目の前に座っている娘のほうがそっくりだ。

「エラと言うのか」

「はい。そうでございます」
 
ルチアは一度もラーヴァの街へ行ったことが無かったが、エラは何度も父親と行っており、貴族に対する言葉遣いは学んでいた。
 
ジラルドをエラの対面に座らせ、ユリウスは隣に並ぶ。質問をジラルドに任せ、ユリウスはじっくりエラを観察したかったのだ。

「エラ、両親はいるのですか?」

「……はい。おりますが」
 
なぜそんな質問をするのか、エラには理解できなかった。

「今日中に両親に会わせてもらいたい」

「……なぜ両親にお会いになりたいのでしょうか……?」
 
エラは不思議に思って怖々(こわごわ)尋ねる。

「わたしが探している娘によく似ているので両親に話を聞きたいと思ったんですよ」

「わたしが……? でも、わたしは両親の……」
 
そこでエラは言葉を切る。自分は両親の子供ではなかったのだろうか?と。もし違うのならば自分は憧れていた街で生活できるのではないか?そこまで考えてしまった。

「今夜、尋ねてもいいだろうか?」
 
ジラルドはやんわり笑みを向ける。その間もユリウスは一言も話さず、エメラルドグリーンの瞳でエラを注視していた。

「はい……お迎えに参ります……ですが、あなたさまがおいでになられる家では……」
 
エラはみすぼらしい我が家では、なにももてなすことが出来ないと思った。

「ではこちらにご足労願えるだろうか?」

ジラルドはエラの考えを察して言った。

「ご足労……?」

「あぁ……こちらへ来てもらえないだろうか」

「……わかりました」
 
ラウニオン国の貴族からの頼みを両親は受けるだろう。


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