神にそむいても


「……私からお兄さまを取り上げるの?」

「ふっ」

姫が涙でほっぺたをぬらした顔を上げて訴えたことに対し、
皇極天皇は鼻で笑った。

「あなた方は初めから同腹の兄妹。取り上げるなど。
 ……他の兄妹と同じように振る舞えば何の問題もありません」

ひどい。
赤の他人よりもよっぽど冷たい。まるで氷のよう。

そして、胸に突き刺さる。

姫に言ってるはずなのに、まるで自分が言われてるみたい。


「嫌よ、嫌!!」

子供みたいに首を何度も振る姫を皇極天皇は本当に冷めた目で見てる。
母娘なのかと思うほど冷たい瞳。

「私はお兄さまを愛しているの。どうか許して」

姫は両手で顔をおおいながら力なく言う。


「あなたは私の顔にも泥を塗っているのですよ」

どこまでも冷淡だ。
淡々と発する言葉、氷のような視線。

母娘の情なんて存在しない。

天皇にまでなる人はこんななの?



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