神にそむいても


部屋で寝転んで天井を眺める。

つっと涙が自然に流れて髪をぬらしていく。

「はぁ……」


姫だって苦しんでる。

それに、今回のことは彼女は知らない。

きっと知ったら怒ってくれるだろうし、
孝徳天皇のところにお嫁に行くって言ってくれるかもしれない。

でも、今度はきっと皇子がそれを望まないような気がする。


ふたりともこの世界では私と智の恩人。

私たちがこの世界で最初に出逢った人じゃなかったら、
私たちはとっくに殺されていたかもしれない。

智との夫婦としての時間もなかったかもしれない。


涙を袖口でゴシゴシと拭く。

「よしっ」


意を決して部屋を出た。


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