駄菓子屋へようこそ(仮)
そんなばかな


日記のようだった。


『4月8日

昨夜はひどい嵐だった。台風一過で晴れ渡る空。彼と約束した。

私が結婚して子供が生まれ、孫が女の子だったら、彼の孫と逢わせたい。

私の店を継いでほしい』


「………これは、まさか」


「遺言書、ともとれるわね」


「はい!?そんな無茶な!?」


お母さんの口から出た台詞に思わず声を荒げた。


「いや、たかが日記じゃないですか」


「だって、お祖母ちゃんの箪笥の引き出しの一番上にあったんだもの。私にもしものことがあったらそこを開けなさいって、この前言われてて」


困った風にお母さん。
呆れた。


だからって、見ず知らずの男と店を継げだなんて言われても。


「どうせ、彼氏もいないんだし。ちょうどいいんじゃない??」


「いやあの、……はあ??!!」


いや確かにいないけど。
いたことないけど。


同級生やら近所の子は早ばやと嫁いだり連れて帰ったり出ていったりして。


わたしはといえば妄想癖で、現実の色恋沙汰には無縁だけど。


だからって!!
だからって!!
そんなばかな!!??



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