対照tone〔詩集〕

6 祈り

道を聞かれて 私はただ
答えただけだった

旅の途中だと 助かったと
あなたは嬉しそうに
何度も頭をさげて

手を

差し出した



遠くの街から
来たあなた

もうきっとお会いする
ことはないでしょう

お互い名乗りもしなかった



それでも祈らずには
いられない


「どうかお元気で」


私の手には あの日戴いた

素敵な思い出が

まだ

握られている
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