銀色の月は太陽の隣で笑う

自分がこれからしようとしているお願いにやましいことなど微塵もないが、いつの世も、他人の優しさにつけ込む悪意ある人間は少なくない。


「トウマ……?」


無防備に自分を見上げる、青みがかった銀色の瞳。その輝きが、今まで無事であったことが奇跡のように思えてならなかった。


「僕が言うのもおかしな話だけど、ルンはもう少し他人を疑うことを覚えたほうがいいと思うよ。自分の為に」


コテっと首を傾げるルウンに、僅かに肩を落として息を吐く。


「ごめん、話が逸れたね。えっと、僕のお願いって言うのは――――」


そのお願いは、おそらくルウンの申し訳なさを払拭するに足るようなものではない。

それでもトーマは構わず願うし、きっとルウンは不満げな顔で叶えてくれる。

それを思えば、やましさはなくとも、自分もルウンの優しさにつけ込むような人間の一人なのかもしれないと、トーマは自嘲気味に笑った。


「今日一日ルンのあとをくっついて回るから、ルンが普段していること、僕にも体験させてほしいな」


最初こそ驚いたように目を見張ったものの、その後は予想通り。ルウンは、とんでもなく不満そうな顔をしていた。

そんなのお詫びにならない!と、憤る心の声が聞こえそうなほどに。



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