銀色の月は太陽の隣で笑う

何も見えない窓から天井へ、再び視線を移して、トーマは小さく息を吐いた。

見慣れぬ天井、見知らぬ家、漂う匂いも嗅ぎなれず、背中に感じるのは、地面とはまた違った柔らかさ。

それが何だか落ち着かないなんて事もなく、トーマはベッドの上で存分に体を伸ばしてくつろいでいた。

旅人であるため、必然的に野宿が多いトーマではあったが、優しい人に出会えれば寝床を提供してもらえる時もあった。

その為、地面の上だって見知らぬ家の中だって、その気になればどこでだってくつろぐことができる。

けれど今は、体はくつろいでいても、その中は不思議な高揚感に満ちていた。


「外から見たのとは、全然印象が違うもんだな……」


外観はやっぱり少し廃れた寂しい感じがあるけれど、中には真逆の温かさがあった。

廃屋を思わせるような館の中は、生活感で満ち溢れている。

そのギャップが、堪らなくトーマを興奮させた。

しかもそこに住んでいるのは、これまた珍しい色の髪と瞳を持つ少女。


「こんな素敵な出会いがあるから、旅人はやめられないんだよな」


楽しげに笑って呟いて、トーマはそっと目を閉じる。

高まる気持ちを押さえ込むように深く息を吸って吐くと、昼間に溜め込んだ疲労が、じんわりと体を覆っていくのを感じた。

それに合わせて、ゆったりと眠気が近づいてくる。

トーマは、抗うことなく身を任せた。

程なくして、トーマは眠りの世界へ引き込まれていく。





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