libido−軌跡−
他人に対して劣等感のようなものを抱いたのは初めてだった。
四人の姿が頭から離れずにいた。
十万のコートを平然と着る男、誰よりも洗練された都会的な彼女、誰もが知るくらい有名なモデル、国内屈指のビジネスマン、誰がどう言おうと浮世離れした四人だった。

もしかしたら、四人を前にすれば俺もジャガイモの一つかもしれない。そんな卑下した思考をどうにかするべく、仕事やジムに打ち込むようになり、自然とワインバーからも足が遠のいた。

どうにか自信を取り戻しつつ、健全な生活してるなと自嘲していた最中だった。

ジムで彼女の姿を見たのは。

黒のジャージでストレッチをする彼女は、あのワインバーで見かける姿と同じく颯爽としていて、他のだれよりも綺麗な空気を纏わせていた。
それに首筋をなぞる汗がより彼女の艶やかさを引き立てていて、思わず生唾を飲み込んでしまったほどだった。

そしてその左手薬指にはキラキラと光る指輪。

その意味をすぐに理解する。
ワインバーでは一度も見たことのないその指輪の意味は彼女なりの牽制なのだと。

俺がジャガイモ?
そんな馬鹿な話、あるわけない。

こんなにもワクワクと胸が躍るのはいつぶりだろうか。

彼女を手に入れたい。

その欲望が一気に膨れ上がる。

俺が彼女に初めて声をかけたのはそれからすぐのことだったけれど、初めて姿を見たときから半年以上は過ぎていた。

< 6 / 6 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

night&day
侑乃./著

総文字数/4,337

恋愛(純愛)9ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
この世の中、世知辛い事この上ないんだと本気で思った。 本当に神様なんか死んじゃえって思ったし、世界なんて滅亡しちゃえって思った。 だけど、そんな滅亡を願ってしまいたくなるほどの世知辛い世の中でも、甘くかけがえのないものがどこかにはあるのだと知った。 世の中捨てたものじゃない!
短編集
侑乃./著

総文字数/7,365

恋愛(純愛)10ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ファンの皆様に感謝をこめて この世の中の どこかの だれかの 日常の one scene
fragment
侑乃./著

総文字数/8,120

恋愛(純愛)30ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
蛍が飛び交う夏の夜 俺達は出会った 無くしたと思った幼いころの記憶は 相も変わらずキラキラと輝いていた

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop