桜時雨の降る頃
ぽん、とわたしの頭に手を置いてよしよしするように撫でてくる。

そんな優しい行為を朔斗から受けるのは滅多になくて驚いて振り返った。


見ると、弱々しい笑顔がそこにあった。


無理して笑ってる……


胸の奥が痛くなって、鼻がツンとした。


「わたし……朔斗が心配だから、後は追わないよ」


「どういう意味だ」


「わたしまでいなくなったら、朔斗も来ちゃうかもしれないでしょ」


「…人をストーカーみたいに言うな」


「陽斗にもついてっちゃダメだよ」


「……分かってるよ」


「いつか、会えるよね?」


「当たり前だろ」


いつか、大丈夫になる日が来ると信じて


朔斗は当然のようにそう答えた。


わたし達は暫くの間、手を握り合った。

わたしがまた眠りにつくまでずっと朔斗が手を離さないで傍にいてくれたのを


後から母に聞いて

冷え切っていた心にほんのりと明かりが灯ったような感じがした。





それからわたし達は


ーーーー会わないまま、2年の時が流れた。










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