桜時雨の降る頃


3月の終わり。

ようやく厳寒の冬に終わりを告げ

肌寒い日と暖かい日が交互にやってきて、春の始まりを感じる季節の変わり目。



人々は、桜の蕾が膨らんでくるのを見つけては

もうすぐだね、と

満開の桜を想像して顔を綻ばせる。


みんなが好きな、桜の季節の到来だ。

わたしもご多聞に漏れずに好きだったし、お花見もほぼ毎年していた。



でも、今は…………


お花見なんて到底できない。




桜を見ると、あの日を思い出しては、胸が締め付けられるからだ。





桜が満開に咲き誇る中、突然冷たい雨がシトシトと降ってきたあの日。





途方に暮れて彷徨っていたわたしは、傘も差さずに桜の下で泣きじゃくった。


頬を濡らす水滴が、涙なのか雨粒なのかも分からないほどに。


ひらひらと舞い落ちる無数の桜の花びらが地面に落ち、雨に濡れていくのを眺めてまた、悲しみも降り積もっていった。





ーーそれまで当たり前のように隣で陽だまりのように笑っていた人が、いなくなった。




突然すぎて受け入れられなくて

諦めきれなくて。






ーーーーあれから、もうすぐ2年が経つ。


それでも、わたしはあの日のまま


……時が止まってしまっていた。



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