桜時雨の降る頃

陽斗とお別れをした日、わたしは夢を見ていたことを思い出す。


あの時、夢の中で陽斗が言っていたのは

今日のこのことに繋がっていたのかもしれない。


ずっと朧げだったのに

急に鮮明に蘇ってきた。



『いつか分かる時が来ると思う。
でも、これだけは信じて。

俺は雫を誰にも渡したくないくらい、好きだった。

かけがえのない存在だったから、失いたくなかった』



あの手紙の最後には、


たとえただの幼なじみに戻ったとしても、と書いてある。



きっと陽斗は、わたしが20歳になるまでに

賭けていたんだ。


それまでにわたしが本当の気持ちを見つけられるように。



もしそれがダメでもわたしを一旦手放すつもりだったんじゃないだろうか。


「……敵わないな、陽斗には」


本当に、誰よりも


わたしの気持ちに寄り添ってくれる人ーーーー





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