聖夜の奇跡

仕事を終えると、保育園まで子供を迎えに行く。



「マコト君ー!お母さん迎えに来たよー」



先生が言い終わる前に、部屋の隅から走ってきた息子が足元にまとわりついた。



「ただいま」

「おかえりー!」



結婚して1年程で授かった子供は、今年で5歳になる。
私がすぐに職場復帰しなければいけなかった為、3ヶ月の頃からずっと通っている。半分は保育園に育ててもらったようなものだ。


園からの帰り道、この近辺は坂道だらけで自転車も使えないし、たいした稼ぎもない私はバス代も勿体なくて、30分程の道のりをゆっくり歩いて帰る。


子供の手を引いて。
茜色の空の下、子供の顔もほんのりとオレンジ色に染まる。


冷たい木枯らしが駆け抜けるけれど、心は暖かい。
風に吹かれた枯葉が、足元を転がり私達を追い越した。



「見てー!お母さん、葉っぱが急いで帰ってる!」

「ほんとだねー」



子供の感性の豊かさを感じながら、季節ごとの空を愛でるこの時間は、何にも代え難い。



「マコト、今度ね、お母さん夜にお出かけしないといけないから、その日はばーばの家でお泊まりしてね」

「うん、わかった」



余りに素直な息子に、ちょっとだけ罪悪感。
ごめん、その日お母さん「ふぐ」なんだ。


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