きっかけは
手に入れた温もり




「彰!」


喫煙室に行く途中、呼ばれて振り返れば思った通り可憐でなんとなく口角が上がった気がした


可憐は「今日は忙しい?」と言いながらお酒を飲むジェスチャーをした
その姿が無性に愛しく感じて抱き締めたくなる


無意識に手が動きそうになるのを理性を総動員させて止めた



「いや、今日は残業も無さそうだな、行くか?」


そう言って俺も同じ様に酒を飲む仕草をする


「うん!じゃあ、また店で待ち合わせね!」

「あ……」



可憐は颯爽とスカートを翻して行ってしまった


一緒に行けば良いじゃん………
なんで、店で待ち合わせなんだよ……付き合ってんのに


今までだって店で待ち合わせが定番だったくせに、今は少しでも長く可憐と一緒にいたい
そんな風に思う自分に戸惑いながらも気分はいい


それに、一緒にいてるところを皆に見せ付けたい
可憐は俺のだと


付き合い始めてもう二週間になる
同じ会社でも部署が違うしお互いなかなかの忙しさだ


それでも、毎日のLINEや電話
会えるときはこうやってお互い努力しながら会っている


でも………




「吉岡、お前まだ可憐さん抱いてないの」

「!!た、た、高梨!」



急に背後に来るな!


「びっくりし過ぎ」



高梨は静かに笑いながら煙草に火をつけた
なんか、その姿がまた男らしくて良い男でムカつく



「図星か?」

「……っっ」



びっくりしたのは突然現れたこともそうだけど、高梨の放った言葉



「別にヤれとは言わないけどさ、ぎこちない」



ぎこちない
確かに


きっとそれは、俺が



「可憐さん、不安にさせるなよ」


高梨は肩をポンッと叩いて煙を吐き出した




不安に、させてるのだろうか




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