泥酔ドクター拾いました。
1年前、付き合っていた彼にプロポーズされ、結婚を前提に同棲することになって退寮した。

独身寮の1階にある共同スペースでみんながケーキや花束を準備してくれて、お祝いパーティーを開いて笑顔で退寮したんだったっけ。


同棲がスタートして半年も経たないうちに職場で体調不良になって家に帰ってみたら、彼がベッドに知らない女と裸で寝ている現場に鉢合わせてしまった。


後で分かったのは、その女は彼の職場の後輩。

不規則な生活の私と出張の多いサラリーマンだった彼の生活リズムは全く違っていて、すれ違うことが多かったこともあるけれど、結局彼は、私じゃなくてその彼女を選んだ。


「誰?」

私を見て、彼に尋ねた彼女に彼は気怠そうに呟いたんだ。

「あぁ、ただの友達」

って。


「そう」

勝ち誇ったように私に笑って見せた浮気相手の彼女の顔を私は今でも鮮明に覚えている。


ただの友達が、あんな時間に家に遊びに行くはずがない。
ただの友達が、合い鍵なんて持っているはずないのに。

本当は分かっているくせに、わざとらしく彼に尋ねた彼女のしたたかさに私は負けた。

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