キミの螺旋

〈4〉作られた記憶

かなりのイメージが必要だと思った。

まるで催眠術でもかけられるような感じだ。




この世に誕生して産声をあげたおれ。

母親に抱かれ…おれは
『この人が母親』

そう思ったハズだ…

外の世界は寒いと感じ…すぐに暖かくなった。
産湯につけられ、身体についてる羊水を丁寧に洗い流していく。

そしてキレイな布に包まれ、大事そうにベッドに寝かせられた。

まだあんまり眼は見えてなかったと思う。

それでも周りにいる人達を認識できた。

『目が誰に似てる、鼻は父親似だな』って言いながら
ガラス越しに嬉しそうにおれを見ているのは…父親と、その両親。

つまりおれの祖父母。

彼らや母親の幸せな感情がストレートに分かる。
誰もがおれの未来を希望に満ちたものだと考え、血の繋がった子供が生まれた事に喜んでいる。

おれもそう感じただろう?

母親のお腹の外の世界は光に満ち溢れていて可能性なんか無限に広がっている。

この人生で何を学ぶべきかもわかっていた。





この生まれた時の事を読んで…イメージしたおれは何故か涙を流していた。


全然こんなの違うかもしれないけど
…生まれた時、おれもそう感じた気がしていた。
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