全て、忘れて。
「ご、ごめんね?これ…あの、肩に掛けてくれると…」

「は、はい…」


彼が差し出してくれたバスタオルを肩に掛ける。
そのタオルは、さっきのタオルと同じようにふわふわで。
少しとげとげしてた心が、少しだけ癒された気がした。


「そういえば…まだ名前聞いてなかったね。
僕の名前はコウ。よろしくね。」

「あ…佐藤琴美です。」

「琴美ちゃんね。よし、覚えた!じゃあ行こう?」

「え、」


そう言って、優しく私の手を取ったコウさん。

え、どこ行くの…!?


「あの、コウさんどこに行くんですか…?」

「あぁ、ここの住人だよ?僕以外にあと2人いるから…」


え、あと2人いるの…!?
コウさんは優しかったけど、後の2人も優しいとは限らない。
厳しいこと言われたらどうしよう…
"早く出てけよ!!"とか…
逆に、コウさんのようにすんなり受け止めてくれる方が稀だよね。
…拒否られるのには慣れてるけど。


「ここだよ。」


コウさんが止まったのは、金色のドアノブが付いた豪華で丈夫そうな茶色のドアの前。
…いや、ここに入る勇気ないです…


「行くよー。」

「え、ちょっと…!」


そんな心の準備をする時間も与えてくれず、
コウさんはいとも簡単にそのドアを開いた。
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