魔法使いの巫女少女Ⅰ
「…で、見つけて帰ってきたと?」
少年と彩矢は、一度退いて報告をしていた。
だが、報告を聞いていた男は少年に問いただしていた。
「ああ…」
少年は少し目をそらして言った。
男はナイフを少年に向かって投げた。
少年はそれを片手で受け取った。
「お前ともあろうものが、なにやってんだ?
わかってるのか?
あの娘は俺達が使うのにふさわしいのは?」
「…わかってる…」
「わかってて逃がしたのか?
だったらおまえ、どう責任を取るつもりだ?
王はひどく荒れているぞ?」
「次に万全の状態で…」
「次はない。」
「なに…?」
「もう一度だけ言うぞ、次はない。
王はすぐにでも欲しかったんだよ。
あの娘の力が、あの娘の膨大な魔力と霊力が。」
「なんでだ?」
「わからないのかよ?なら教えてやる。
あの方はな…」
『もういい、下がれザクラ。
翡翠、すぐに俺のところまで来い!』
「わかりました、我らが王よ…。」
そう言うと、声は消えた。
それを確認したザクラは言った。
「上手くいえよ、おまえはあの娘を連れてくるための道具のようなものだからな。
しかしおまえ、翡翠って呼ばれてるのか?」
「ああ、元々の名をあいつに知られたくないと俺がいった。」
「なるほどな…」
それだけを言うと、翡翠と呼ばれた少年は姿を消した。
ザクラはそれを確認してポツリと言った。
「あの娘に知られたくないか…。
まぁ、仕方ないかもな。
だがかわいそうだな…、あいつもあの娘も。」
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