オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
空には晴天が広がり、朝には冷えを感じた空気も今はポカポカとした春の陽気に変わっていた。

すっかり高く昇ったお日様のやわらかい日差しに目を細めながら、向居は仕事の時とは違う、少し気の抜けたような口調で続けた。


「俺、東京出身だからさ、物心ついた時から人混みの中で暮らしていたと言ったらオーバーだけれども、どこに行っても人人、物、建物、って環境にいい加減飽きてしまったんだよな。こうして旅行業界に身を置いているのも、ヒトやモノにあふれた生活から抜け出したいって気持ちがあるからなんだと思う」


しみじみと話す向居に、私は「通りで」と妙な納得を覚える。


「向居の商品がいっつも中高年からの人気が高いのはそのためなのね。でもその歳でそんなに疲れているのも、どうかと思うけども」

「はは、そうだな。もうじいさんだな」


私の皮肉に向居は屈託なく笑った。
ほがらかな日差しのせいか、なんだかひどくのんびりとした人に見える。

ふぅん、都会嫌いかぁ。
また向居のイメージが変わったな。

都会生まれの都会育ちの向居は、都会から離れては生きていけないようなハイセンスなイメージだったけれど。
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