オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
「はぁあ、ここの店員さん、営業テク高すぎ」


すでに軽い疲労感を感じながらレンタル屋を出た。
とたんに、花街通りを行く観光客の視線が私たちに集まる気がする。
特に女性からの視線を熱く感じるのは、明らかにこの男のせいだ―――と、向居を見上げてみれば、ただでさえ背が高いのに、下駄を履いてさらに高くなったことに気づく。

品のいい浴衣を着て、精悍な雰囲気に堂々とした風格も合わされば、これは視線を集めない方がおかしい。

私たち、完全にカップルって見られてるわよね…。
いっそ向居の陰に隠れてしまいたいような気になっている私を、向居が意味深な微笑を浮かべながら、しげしげと見下ろしてきた。


「…なによその笑みは」

「やっぱりよく似合っているな、と思って」

「…お世辞はいいわよ」

「お世辞なもんか。集まってくる男たちの視線が、すげーいい気分」

「はぁ?」


向居はおもむろに腕を差しだした。


「さてお嬢様、食事へまいりましょうか」





< 121 / 273 >

この作品をシェア

pagetop