オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
「またお寺ぁ?」


今朝のお寺と引けを取らず立派な古刹だった。

ここも観光スポットして有名だから一応知っている。
けど正直、雰囲気以外は見応えはないと思ったのでロケハン候補からは外していたのだけど。
ここに来るくらいなら、チェックしていたスイーツ食べに行きたかったなぁ…。

なんて私の本心などつゆ知らず、向居は境内を黙々と歩いていく。

それにしても、向居はこういう雰囲気の場所がよく似合う。
浴衣を着ている今はさらに実感してしまう。
凛とした後ろ姿や落ち着いた雰囲気が、この空間に溶けこんでいるんだ。

いるだろうか。
三十代にも達していないのに、こんな落ち着いたオーラを持つ男が。

…そんな向居がこじらせている片思いの相手って、いったいどんな女性なんだろう。
きっと、向居に負けず劣らずの素敵な女性なんだろうな…。

不意に胸にもやっとした感覚が湧いて私は戸惑った。

なによ、向居の片思いのことなんてどうでもいいじゃない。向居はライバルよ。仕事以外のことなんて気にする必要ないじゃない…。
< 137 / 273 >

この作品をシェア

pagetop