オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~



寝過ごしたせいで、今日の予定はすっかり狂ってしまった。
コーヒーを飲み終えてファミレスから出た時には、時刻は午後二時近くになっていた。
午後の予定を今から実行しても、中途半端になってしまう。
仕方なく私と向居は、近場のスポットやお店を軽く回って時間をつぶすことにした。

お互い、まだお酒が残っていたのと変な時間に起きたせいでぼうっとしていたのが助かった。
結局、昨晩のことについては一度も話題にのぼらないまま、なんとなく歩き回っている内に時間が過ぎていった。

そして、時間が流れるにつれ、私の胸には空虚感にも近い物淋しさが広がってきていた。

日常を忘れる楽しい旅行で唯一寂しさを覚えるといったら、きっとそれは最終日の夕方だ。
「楽しい旅行の終わり」を、まざまざと意識してしまうから。
…特に今回の旅行は、本当にいろんなことがあって…たったの三日間が何倍にも感じる。
もうずっと長いこと向居と一緒にいたような、そんな錯覚さえ覚える。
本当に、いろいろあった。だから…

戻りたくない…。

基樹と別れて独りになる日常よりも、向居とただの同僚に戻る現実に戻りたくなかった。
向居との恋人ごっこが、終わってしまうのが悲しかった。
そして、そんな自分に戸惑っていた。

二時間近くが過ぎ、時刻は十五時半頃。
三時間後には私たちは新幹線に乗っていなければならない。
家に着いた頃には夜も遅い時間で、片付けもそこそこに眠りに就けば、すぐ朝が来て出社だ。


「あと二時間ぐらいしたら、駅に行った方がいいかな」


向居が腕時計を見つめながら言った。
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