オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
強い風が私をとりまく。
まるで私の心の中のように、吹き荒ぶっている。
卑怯者のくせに、臆病者のくせに…彼氏に捨てられて早々、他の男のもとに行っていいの? これからは仕事に生きるつもりじゃなかったの? 独りなんて怖がらないくらいに仕事に没頭するんじゃなかったの? 向居がその原動力になるはずじゃなかったの?
私はまだ胸を張れない。自分を誇れる自分に戻れるか、向居に相応しい女になれるかどうか、自信がない。
「訊いていいか?」
ぽつりと向居が囁いた。
「今回の旅行が一人になったのは、本当に彼氏の仕事のせいか?」
「…」
「恒田は確か、支店営業勤務だったろ。彼女との旅行をドタキャンするような急な業務が入るとは思えない」
私はできるだけ努めて冷静に返した。
「だから、たまたま偶然が重なって急な要件が入ったのよ。本当に珍しいことだけど、運が悪かったの」
「そうか」
意味深な向居の相槌。信じていない、って雰囲気が、じわじわ伝わってくる。
向居はしばらく押し黙っていたが、やがて意を決したように再び口を開いた。
「俺はお前が一人になったのは、もっと別の理由があったからじゃないのかと思っている。たとえば、昨晩の涙に関係して、とか」
やっぱり、昨晩のこと、ずっと気にしてたのね。
私は笑ってやたら明るい声で返した。
「ごめんね、びっくりしたでしょ、昨日の夜は」
「まぁな」
「ひいたでしょ」
「いや。鬼の目にも涙とはこのことだな、と感心した」
「…もう、意地悪ね…!」
思わず肘打ちを向居の腹に見舞うと、背中からくつくつと笑い声が伝わってきた。
「悪かったよ、冗談だ。…正直、驚いたよ。普段弱さなんか絶対見せないだろ、都は。新人の時だって、先輩に叱られて泣かなかった女子社員はお前くらいしか知らなかったし。―――だから、お前が涙を流すなんて、よほどのことがあったんじゃないかと思ったんだ。―――二日前、東京駅でお前を見つけた時」
まるで私の心の中のように、吹き荒ぶっている。
卑怯者のくせに、臆病者のくせに…彼氏に捨てられて早々、他の男のもとに行っていいの? これからは仕事に生きるつもりじゃなかったの? 独りなんて怖がらないくらいに仕事に没頭するんじゃなかったの? 向居がその原動力になるはずじゃなかったの?
私はまだ胸を張れない。自分を誇れる自分に戻れるか、向居に相応しい女になれるかどうか、自信がない。
「訊いていいか?」
ぽつりと向居が囁いた。
「今回の旅行が一人になったのは、本当に彼氏の仕事のせいか?」
「…」
「恒田は確か、支店営業勤務だったろ。彼女との旅行をドタキャンするような急な業務が入るとは思えない」
私はできるだけ努めて冷静に返した。
「だから、たまたま偶然が重なって急な要件が入ったのよ。本当に珍しいことだけど、運が悪かったの」
「そうか」
意味深な向居の相槌。信じていない、って雰囲気が、じわじわ伝わってくる。
向居はしばらく押し黙っていたが、やがて意を決したように再び口を開いた。
「俺はお前が一人になったのは、もっと別の理由があったからじゃないのかと思っている。たとえば、昨晩の涙に関係して、とか」
やっぱり、昨晩のこと、ずっと気にしてたのね。
私は笑ってやたら明るい声で返した。
「ごめんね、びっくりしたでしょ、昨日の夜は」
「まぁな」
「ひいたでしょ」
「いや。鬼の目にも涙とはこのことだな、と感心した」
「…もう、意地悪ね…!」
思わず肘打ちを向居の腹に見舞うと、背中からくつくつと笑い声が伝わってきた。
「悪かったよ、冗談だ。…正直、驚いたよ。普段弱さなんか絶対見せないだろ、都は。新人の時だって、先輩に叱られて泣かなかった女子社員はお前くらいしか知らなかったし。―――だから、お前が涙を流すなんて、よほどのことがあったんじゃないかと思ったんだ。―――二日前、東京駅でお前を見つけた時」