オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
独りになりたかった。
気持ちの整理をしたかった。自分が本当に望んでいることを選ぶための勇気を、私の中に探したかった。
そのためには本当に立て籠もるしかない。お手洗いのマークを見つけ、そちらへ向かう。
すると前方から、入店してきたばかりらしいカップルがやってくるのが目に入った。

なんの変哲もない若いカップル。
けれど、その二人を見るなり、私は立ち止まってしまった。
そして凝視してしまった。

信じられないものを、目にしてしまったかのように。

楽しそうに窓の外の景色に感激しあいながら歩いてくる、どこにでもいるような男と女。
凝視される違和感に気付いたのか、二人もこちらに視線を向けて私を見つめ返し、途端に目を見開いた。数瞬前まで浮かべていた笑顔を凍り付かせて。

三人の間に恐るべき沈黙が続いた。
私も二人も驚きと疑問と困惑がごちゃ混ぜになった表情を浮かべて、絡みついたまま逃れられないように視線を外せずにいた。

それもそのはずだ。
地方の、しかもこんな陸の先端で、浮気男とその相手とその彼女が遭遇するなんて災厄、易々と受け入れられるものじゃないもの。




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