オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
「そうだな、二人で手分けした方が早く見つかるかもしれないしな」


「ちがうよ」と都は笑った。


「二人で住む部屋、探そう?」


思わず俺は都を見下ろした。


「…いい、のか?」

「いいの。私、一緒に暮らしたいの、柊介と」

「…」

「怖かったのよ。周りに急かされてしまうのが。けど、それよりももっと怖いのは、柊介と離れてしまうことだって気付いたから―――」

「俺は離れたりなんかしない」


一生、お前を離しはしない。

都の小さな身体を両腕で包み込み、俺はますます高まってしまった独占欲を剥き出しにして告げる。


「いいのか。一緒に暮らすってことは、そういうことを認めたってことだと受け取るからな」

「?」

「結婚もしていない男女が同棲だなんて不埒なことは、俺はしない主義なんだ」


一瞬間を置くと、都は照れ笑いをごまかすように小さく噴き出した。「昭和男子?」

その微笑はとても嬉しそうで穏やかで、俺は込み上がる愛しさにまかせて強く強く都を抱き締める。


「なんとでも言え。俺は実直の塊のような男だからな」


「知ってる」とでも言うように、都が俺の胸に頬をすりよせた。

今は言わない。
こんな仲直りした後のしかも寝起きの状況でなんて、絶対に言いたくない。

申し込むのは、最高の条件で最高の場面で、都が人生最高の瞬間だと思うような完璧な状況の時だけだ。
楽しみだ。
その時もその時を迎えるまでの準備も、なにもかもが楽しみだ。
高揚してきた俺は、ついばむように何度も都の唇にキスを落とす。
まだ眠たそうな都は、迷惑そうに、でも嬉しそうにころころ笑ってキスを受け止めてくれる。

俺は今、すごく幸せだ。
都に出会えて、俺は世界一幸せだ。

指を絡め合って、俺はほんの少し許された出勤前のまどろみを都と楽しむ。

この小さくて細い指に合うサイズを考えながら…。











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