過ぎ行く時間の中で
君を知りたくて
少し疲れた。

ここはどこだろう?見たこともない地名である。ただ闇雲に車を走らせてきた。走る場所はどこでもよかった。
高速をひた走っていたのだが、私は休憩所に入った。

トイレに行き、喉が渇いたので、自動販売機の前に立った。コーラが好きな私は、コーラを押そうとしたときに、頭に声が響いた。

『はい、喉が渇いたんでしょ?』

頭の中の結女がそう言った。私はコーラを押すはずが、ついつい苦手な缶コーヒーを買ってしまった。

「まったく…。今度は何を買収しようってんだよ…。」

私は思わずつぶやいてから、車に乗り、タバコを燻らせたのだった―


私はそれから、結女と付き合いだした。相変わらず二人の付き合いは、スロットに行ったり、カラオケに行ったり、ご飯を食べたりと、そんなに変わらなかった。

ただ変わったと言えば、彼女らしい振舞いになった。手をつないだり、呼び合うのも呼び捨てになったりしていた。

私はといえば、それから大学にもマジメに行くようになった。単位をしっかりとって、そろそろ就職しなければと思うようになったからだ。

今までの自分には、大学に行く意義や、目標などなかった。この時もしっかりした目標があるわけではない。

しかしこの時の私は、少しでも結女のために変わろうということを心がけていたと思う。

不思議と、結女と接していると自然にそういう気持ちになっていくのだった。

おかげでこのまま行けば、単位数も何とか確保できそうだ。就職ができるかどうか、そこまではわからない。

ただ、結女のように、まっすぐ生きてみようと思ったのである。

『バカね~。それが当然の大学生でしょ!』

頭の中の結女の言うことが正解だと思う。

私はタバコの火を消しながら、

「そりゃそうだ。でも、この進歩を少しはわかってくれっての。」

そう言って、再びエンジンをかけ、車を走らせたのだった。

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