【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難


「ねえ、アルフ。聞いてるの?」

「……なんだ、ちゃんと聞いてるぞ」


アルフレッドは顎を擦りながらもシルディーヌに目を向けた。

声は、届いていたようだ。


「えっと。だからね、団長のものとか大事なお方っていう誤解を解いてほしいって、言ってるの。明日にでもみんなを集めて、違うって宣言してほしいわ」

「ほう……誤解を解いてもいいのか?」

「どうして? そんな噂が広まったら、アルフだって迷惑でしょ? 私は困るわ」


シルディーヌは胸の前で手を組み、アルフレッドによく伝わるよう大いに困って見せた。


するとアルフレッドは舌打ちをし、立ち上がって移動してくる。

シルディーヌはその様子を不思議そうに見上げた。

どうしてこちらに来るのだろうか?

背の高い体が目の前に来て見下されると、それだけで威圧感がある。

本能的に危機を感じて逃げようとすると、すぐわきの背もたれにアルフレッドの手が置かれ、退路を断たれてしまった。

恐る恐る見上げれば、唇は弧を描いているが目はちっとも笑っていない、黒い笑顔があった。


「お前は、分かってるのか?」

「え?」

「ここは、男ばかりだぞ」

「そんなこと、アルフに言われなくても分かってるわ。さっきも、さんざん訴えたでしょう?」

「いや、お前は、全然、分かってないぞ。男ばかりの怖さを」


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