幼馴染は関係ない
19話
●上尾竜生:視点


中元は小学生の時、俺と花音は好き同士なのだと思っていたと言った。
確かに俺は花音を好きなのだと自覚し始めた頃だけど、花音はガッツリ中元を想っていた。
・・・俺が二人を邪魔したというのは花音の思い込みでもなんでもなく事実だった。

「上尾君さ・・・花音を好きなんだ?」
中元が真っすぐに俺を見る。
俺は何を言えばいい?
花音が好きだ。 
いや、好きだなんて言葉だけではなく、花音とは一生一緒にいるのだと思っていたくらいだ。
でも、花音は中元を好きだと言い、中元と付き合っている。

「さっき・・・花音とずっと付き合っていくっていったけど、本気か?」
中元からの質問には答えず俺は訊く。
「え?」
「花音をこの先、傷つけないって約束できるのか?」
「その約束は上尾君にしなくちゃいけないのかな? 上尾君は関係ないよね?」
中元の言っている事は確かだ。 だけど、俺はどうしても、中元が花音を好きだなんて信じられない。
「花音を俺に返してくれ!」
俺は潔く頭を下げた。
「上尾君!?」
「花音の事は忘れてくれ。 頼む!」
「何を言ってるの!? 花音は物じゃないよ!!!
それに、僕は花音を好きなんだ。忘れるなんてできる訳ない!!!」
「中元と花音が付き合ってるってことも、どんな関係かってことも分かった上で言ってる」
花音と中元が浅い付き合いでは無いって事も・・・。
かなり悔しいし、信じられない想いだけど、自分だってこの年まで綺麗なままでいた訳では無い。
「分かっているなら、どうしてそんな事が言えるんだ!?」
中元が怒っている。
初めて見る表情だ。
「俺にとって花音は家族になる女だと・・・そう思ってきたから」
「・・・え?」
「中元はそこまでの気持ち、無いだろ?」
「ちょっと待ってよ! 上尾君には彼女が居たって聞いたよ?
花音は、上尾君が自分を恋愛対象になんて見ていないって言っていたんだ・・・」
中元は俺の言葉を真っ向から否定する。
・・・確かに俺には彼女が居たし、それを花音に自慢してきた。
だけど、それは・・・素直じゃ無い花音に対して、やきもちを焼いて欲しいっていう行動だったんだ。
どんなにその行動が浅はかで、馬鹿な思い付きだったのかと後悔しても遅い・・・。
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