愛されることを受け入れましょう
「そう、当然。だって車がないと柚珠奈を送っていけないでしょ。どっか出かける時にも便利だしね」

「待って。じゃあ、車買った理由って私!?」

「もちろん。知らなかったの?」

「‥‥知らなかった」

でも、全然意外じゃない。ううん、いっそ一番納得出来る理由かもしれない。

「ふふ、柚珠奈らしいな。でも折角だから覚えといてよ。この車の助手席には柚珠奈しか乗ったことないし、これからも乗せない」

前を向いたまま、さらりと告げられる言葉の威力が凄くて息が止まりそうになる。

「ま、またぁ‥‥そういう事をサラッと言っちゃうから、女の子が誤解しちゃうんだよ?樹くん、まだ自分がモテるって自覚が足りてないんじゃない?今みたいな会話だって、私だからちゃんと”樹くんは優しいな、責任感あるな”って取るけど、他の子なら間違いなく違う受け取り方するよ。」

嘘だ。本当は私だって勘違いしそうになってる。でもそんな事知られたら恥ずかしすぎるから、お説教口調でしゃべり続ける。

「大体さ、樹くんは私に構いすぎなんだよ。そりゃ、頼っちゃう私もいけないんだけどね。こんなんじゃ私達いつまでたっても恋愛も結婚も出来ないよ。そうだ!私も行ったんだし、次は樹くんが合コン行ったらいいよ!あ、でも樹くんは私と違ってモテるんだから、そんなトコ行かなくても」

「柚珠奈」

気持ちを隠したくて誤魔化したくて、思いつくままに言葉を口にする私を遮るように、樹くんが静かに名前を呼んだ。

< 77 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop