眠れぬ王子の恋する場所


「え……その人、いくつなんですか?」
「二十九。俺と同級」

「それなのに、目を放すと心配って……え、まさか自傷行為とかそういうことしちゃうタイプの人ですか? だったら私、うまく励ましたりできないし、荷が重すぎるっていうか……」

そういう人は、励まし方を間違えると危険だって言うし、逆に追い詰めてしまう可能性もあるって聞く。

なんの知識もないのに……私には無理だ。無責任すぎる。

そう思い言うと、社長は「違う違う。そういうヤツじゃない」と否定するも、だからと言って、どう心配な人なのかをうまく説明できないらしく。

「まぁ、とにかく様子見てきてくれればいいから。住所は今、携帯のメールに送っておいてやったから」

そう言い、話を切り上げようとする。

間もなくしてバッグのなかの携帯が震え、届いたメールにはホテルの住所とルームナンバーが書かれていたけれど……私が行かなきゃいけない意味がわからない。

「仕事じゃないんですよね? だったら、社長がこれからなり仕事終わったあとなりに行けばいいじゃないですか」

こんなの完全に私用だ。

「俺はこれから夜まで仕事だし。アパートに住む他の住人の迷惑を考えずに夜遅くまで騒ぐバカな大学生をびびらせねーと」
「ああ……そんな依頼ありましたね」

夜遅くから明け方まで毎週末騒いでるけど、注意するにもそれからの関係を考えると強く出られないから、大家の息子を偽って注意して欲しいって依頼が入ったのは二日前。

一喝すればいいだけなのに、アパートの住人代表から提示された金額は三万円で、社長がふたつ返事をしてたっけと思い出す。



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