エリート御曹司が過保護すぎるんです。
 午後の親善試合の結果は、惜しくも2位だった。
 うちの支社のメンバーも頑張っていたけれど、やはり本社のチームは強かった。

「残念でしたね。でも、みんなかっこよかったです。試合も終わったことだし、私、そろそろ帰りますね」

 社員さんたちに向かってぺこりと頭を下げる。みんな「応援ありがとうね」とニコニコ笑って手を振ってくれた。


 紫音と一緒に体育館のロビーに出る。

(やっと任務完了だ~)

 私はホッとして大きく伸びをした。

 ところが、隣にいた紫音が、いきなり私の腕を掴んだ。
 そのままぐいぐいと階段の陰まで連れていかれる。

 紫音は神妙な顔であたりを見回すと、私の目をまっすぐに見つめて言った。

「ところで桃ちゃん、なにで帰るの?」
「なにって、バスだけど……」
「……もう今日のバス、終わってるよ?」
「え?」

 私は慌ててバッグをさぐり、手帳を取り出して開いた。
 青羽が調べてくれたバスの時刻が書いてある。
 このあと、16時半の最終便があるはずだ。

「今日は土曜日だから、そのバス運休なんだよね」
「うそ!」

 私は全身から血の気が引いていくのを感じた。
 困ったように私を見ている紫音。
 タクシーでの帰宅手段も思い浮かべてみたけれど、料金を計算するのも怖い。


 どうしよう。帰れなくなってしまった。
 仕事ではミスをしないよう気を付けているのだけれど、こんなときに致命的な大失敗をしてしまうなんて!
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