エリート御曹司が過保護すぎるんです。
 目を伏せて私の髪に口づけている彼は、すこし震えているようだった。

 彼は私に、好きだと言ったのだろうか。

 堰を切ったように、気持ちがあふれ出す。
 どうしようもなく二階堂さんに惹かれていく自分の気持ちに、もう嘘はつけない。


 最初は姿を見るだけで幸せな気持ちになれた。
 挨拶を交わすだけで、その日一日頑張ろうというパワーが湧いた。
 サマータイムで出社時間が30分早くなり、彼との距離が近づいた。

 そして今、私は彼の腕のなかにいる。
 この状況が夢じゃないことを確かめるように、そっと彼の腕に手を添えた。

「私も……好きです」

 そう告げた瞬間、くるりと体の向きを変えられ、正面から彼の腕に抱きしめられた。
 ふわりと香る、汗とオーデコロンのまじった匂い。

 ああ、二階堂さんの香りだ。

 電車で守ってもらったときも、自転車のうしろに乗せてもらったときも、私はこの香りに包まれて、幸せな気持ちになれたんだ。
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