空と君との間に
俺達のバンドは、元々四人で構成されている。


とりあえずベースを捜して、ギターの俺が、演奏しながら唄う…


という事も考えたが、どうしてもアレンジのレベルや、こだわりが、若干落ちるという理由で、却下された。


今更だが、方向性を変えていかなければ…


しかし、中々上手くいかず、ベースはおろか、ボーカルさえも、決まらないままでいた。



…そして俺は、一つの決断をした。


女性ボーカル…


そう、美紗だ…これしかない。


歌を唄うことが好きなんだ。彼女も、一度は恋を選び、諦めた夢だったはずだ…


きっと受けてくれる…そう思った。


俺以外で、唯一残ったメンバーの、亮にも了承を得て、その方向で、もう一度やり直すことに決定した。


俺は美紗を呼び出し、その話を持ち掛けた。




「バンドか…」


「あぁ、俺達は、この方向でやって行こうと思ってる。それで、俺が美紗の話を、亮にしたんだ」


「私じゃなきゃ、駄目なのかな…」


「俺は、美紗と初めて会って、初めて聞いたあの歌声が、今でも忘れられない。美紗の声に曲をつけて、それを唄ってほしいんだ」


美紗は、少しの沈黙の後、考えさせて欲しい…と、返事を待つことになった。


やっぱり、初恋の相手が気になるのかな……


俺は、その相手に嫉妬してはいたが、今いち実感も湧かない相手に、苛立ちを感じても、しかたがない事だ。そう思っていた。



そして、12月中旬…


美紗から連絡があり、会うことになった。


おそらく、バンドの件だろう…そう思った。


放課後…俺と美紗は、駅前の喫茶店で落ち合った。



「もうすぐクリスマスだね…」


「あぁ…そうだね」


「みんなで集まってパーティーしようか!私一人だけ別のクラスだから、何かと会えないし」


「じゃあ…隆志達にも、話しとくよ」


「うん、お願いね!」


俺は、バンドのボーカルの件が気になっていた…


あまりこっちから、話を始めても、何だか嫌らしい感じがして、上手く切り出せずにいた。


すると美紗は、ふて腐れているような態度を、とり始めた。
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